蒼天ノ剣〜空守と蒼姫〜
いくら耳を澄ましても、そんな音は聞こえない。おそらく幻聴だろう、と氷悠は思いつつも、確かめるべきだと判断した氷悠はアクアマリンを空中に投げた。


それは鶯へと姿を変えた。鶯色ではなく、水のように透き通った鳥だった。


空が思わず呟く。


「綺麗……」

「透水は、元は同じ鶯だから美声も持つ。唯一違うのは――どんな音でも聞き逃さない事と、水と同化できる事だ」

「すごいですね。じゃあ、透水の後を追えばいいんですね」

「ああ」


空は、氷悠からどいたものの氷悠に寄り添ったままでいる。


無理もない、と氷悠は思った。



一度も外の世界へ行った事がないのだから。



「怖くてあたりまえだ」



氷悠は空に聞こえないように呟き、本気で嫌ならとうに自分はその手をはねのけている。



氷悠は思う。



それをしないのは、何故だろうと――



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