蒼天ノ剣〜空守と蒼姫〜
座り込んでしまった空は俯いたままで、少年が言った言葉がよほどショックだったらしい。


氷悠が黙ったままでいると、どこにいたのか透水が飛んできて空の肩に留まり頬擦りをする。


氷悠は不思議だなと思った。七火も透水も、空に気を許し今もこうして心配そうにしている。氷悠が腰に着けている宝石をしまっているポシェットから、何かが飛び出す。



――ヒュンッ



『ずいぶんとそこのお姫様に、懐いてるみたいだな氷悠』

「また勝手に……」

『まあまあ。久しいな、深行よ』

「深行?」


氷悠が首を傾げる。一体誰の名なのか、黒巴と長い間一緒にいてもこの名を聞いた事は一度もない。



翡翠の髪がさらさらと、風で揺れる。



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