蒼天ノ剣〜空守と蒼姫〜
目の前で起きた事に何も言えないでいると、男が下を指差す。


「風の力で下に降りるといい。しかし、さすがの氷悠でも今の状況はきついだろうから、力を貸そう」


男が氷悠に手を翳せば、蒼く澄んだ輝きが弾けて氷悠の上からキラキラと降り注ぐ。


「これは一体……」

「この場凌ぎだけの力じゃないからこの先も役立つと思うよ。そろそろ頃合いか……氷悠、下に降りたら神都巫(カンナギ)へ行くといい。巫女様が力になってくれる」

「聞きたい事はあるが、それは巫女とやらに聞く」



氷悠はすうっと息を吸い込む。



「誘え風。我が空守の元に降れ、韋駄天(イダテン)招来!」



鳶色の髪を靡かせた強きな瞳を持つ小柄な少年が飛び出す。



身体には見慣れない紋章が刻まれている。



「本当に韋駄天、なのか……?」

『ああ。にしてもすげーな、人形と言葉も交わせるようになるなんて夢にも思わなかったぜ!下に降りるんだろ?』



韋駄天の周りに風が集まってゆく。氷悠、深行、黒巴と空にも風は集まってゆき身体が宙に浮く。



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