蒼天ノ剣〜空守と蒼姫〜
氷悠が男の方をもう一度見る。


「お前の名を教えろ、呼び名がないと不便だ」

「名乗ってなかったっけ?」

「ない」

「うーん、そうだなぁ。名づけるとしたら……蒼(アオ)かな、蒼って呼んでくれたらいいよ」


男が笑う。韋駄天が氷悠たちを纏う風と共に下へ駆けていき、あっという間に見えなくなり蒼は軽くため息をつく。


「さてと……空守くんを無事下へ導いた事だし、反撃といきますか」


蒼が瞳を閉じる。


「蒼き翼と古の記憶を刻みし竜を核とし。蒼天の彼方より還らん――我、蒼天の主と意思を繋ぐ者」


蒼が唱え終わった瞬間、竜の形をした蒼い風が海を一気に突き抜ける。


「もう、戻って来られるだろう?」


蒼がそう言うと、甲羅に傷がついた巨大な海亀がどこらからともなく現れた。



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