蒼天ノ剣〜空守と蒼姫〜
翡翠の木々に囲われた神社の外で小柄なまだあどけない少女が空を見上げる。


翡翠の髪飾りと耳飾りをつけ、白を基調にした翡翠の巫女服。シンプルな巫女服だが、季節の花が施され装飾はきらびやかだった。


「巫女様」

「燈季(ヒキ)がおらぬ時は私の名で呼べばいいのに」

「いや、そんな事したら俺たちが、怒られるんですって」

「相変わらず燈季は若者には厳しいようだな。燈季がおるから、私も安心して任せられる」

「じゃお言葉に甘えます。――雫、あの男から俺に伝えてきた。あとは任せた」

「ふむ。ではもうすぐか……」

「迎えを寄越すか?」

「それは大丈夫だぞ。お主の兄を既にやっているのでな」

「兄貴を……大丈夫かよ」


雫と対照的に黒衣を纏った少年はため息をつく。真面目で仕事熱心なのは買うが、正直心配の方がつきない。


雫が少年の顔を除き込む。


「光羽だけでは心配か?なら、神威も行くがよい」

「俺は行かない。巫女守だからな」

「自分の身くらい守れるというのに……神威は心配性だ」

「うるせぇよ」


そっぽを向いてしまった神威に苦笑しつつ、雫は嬉しそうに微笑む。



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