どっちつかずのキミ。
「…浬、痛いよ。離して―。」
あたしは浬に訴えた。
でも浬はあたしを一向に離してくれない。
それどころか、あたしの腕を掴む力をまた強くしてきた。
何だか…怖い。
無言で何も言わずにあたしの顔を強い眼差しで見つめてくるから。
何か喋ってよ…ねぇ。
あたしはもうこのいつもと違う空気に耐えられなくなって、浬から目を逸らし下を俯く。
確かにあたしは言い過ぎたかもしれないけど、浬も浬だ。
何も、口も聞かなくなるくらい怒らなくても。
あたしは心の中で浬に腹を立てた。
それから、二人とも無言のまま時間が刻々と過ぎた。
もうどれくらいの間そうしていたか分からない。
それは、十分二十分のことだったかもしれないし、一時間だったかもしれない。
「…実羽」
浬が不意にぶっきらぼうな声で、あたしの名前を呼んだ。
あたしは顔を上げて、浬の方を見た。
すると・・・、
――チュ。
そう音がし、浬の口があたしの唇に当たっていた。
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