どっちつかずのキミ。
「…実羽、」
俺は何か話し掛けようとして実羽にソッと手を伸ばした。
「ばかっ!もう気安く話し掛けないでよお〜!!」
だが実羽は机からガタッと立ち上がり、サッと俺から逃げて去って行った。
…結局、これかよ。
これは行けるかもと思ったら、いつも実羽に逃げられる始末。
俺はハァと小さな溜め息が漏れた。
「…みうみう、追い掛けなくていいの?」
そう俺の背中越しに話し掛けて来たのは吉井だった。
「可哀相〜。大体一回くらい、ちゃんと掴まえてみなさいよ」
厳しい口調でそう言う吉井のその目は、まるで俺を嘲笑うかのようだった。
―絶対、面白がってるだろこいつ…。
「―どうせ、今追い掛けてもまた逃げられるのが目に見えてる…」
俺は吉井に向かって溜め息混じりにそう言い放った。
―俺だって、掴まえられるもんなら掴まえたいよ。
でも、今はまだその時じゃないから。
実羽が俺のことをちゃんと見てくれない限り、掴まえたところでそれじゃ全く意味がないと思った。
俺はもう焦らない。決して慌てず、ゆっくり行こうと思う。
そうしていつか、きっと実羽を掴まえてやる―・・・。
絶交なんて、されてたまるもんかよ。
俺は心の中でそう呟いて、実羽の机に拳を打ち付けた。
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