どっちつかずのキミ。








あたしはやっと教室に向かって歩き始めた。

浬に、もう絶交はなしだよって言う為に―。

ちゃんと話さなくちゃ。

手紙なんかじゃ分からない。顔見た訳じゃないもん。

あたしは俯いて歩いていた顔を上げると、前から歩いて来る人物を見てハッとする。

浬・・・。


一瞬、目が合ったけどあたしはバッと思い切り逸らしてしまった。


仲直り、したいのに―…。

何だか意識しちゃって、気まずくて顔も上手く合わせられない。

一言も声を掛けられないまま、立ち止まったあたしの横を浬はスッと通り過ぎる。


―…って、待って。

そう呼び止める言葉は喉元まで出かかってるのに上手く声にはならない。

浬はピタッと立ち止まると、クルッと踵を返してこっちへ向かって来た。


そして

「…俺はお前と絶交する気ねぇーから。

実羽、俺から逃げてんなよ?」

そう耳元でボソッと囁いてきて。浬はあたしの目を一瞬捕えた。


そうして去って行く浬の背中をあたしはただ呆然と見つめるしか出来なかった。

いつもあたしの心をギュウッとわしづかみにするキミ。

浬の言葉が耳に媚びりついて離れない。


…あたしだって、逃げたくて逃げてるんじゃないの。

ただどうしたら良いか分からないだけ。

だって、キミはどっちつかずのキミ。

宙ぶらりんでフラフラしてる今のあたし達の状況に、ただあたしは必死にもがいているだけ。

ホントは絶交なんて、あたしも初めからする気なかった・・・。








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