どっちつかずのキミ。








―えぇ…と。

洗って来いって言われたけど‥・、
これをどうしろと―?


体育の授業中、コッソリ抜け出して水洗い場の前に来たはいいが、あたしは浬のタオルを手に固まっていた。

それは綺麗で真っ白なタオル。

まるで使った形跡もなく、見た感じまだ新しい。



「なぁーにやってんだぁ?」

浬‥・。

「ぇーと…。タオル、洗ったらいいんでしょ?」

「ヤ、洗うのはいーわ。

これ、今から使うの!」

そう言って浬は水洗い場の蛇口を捻り、バシャバシャと自分の顔を洗いだした。

あたしは浬のやることをただ傍で呆然と見ているだけ・‥(結局、どうしたかったんだ?)

顔を洗い終わった後、浬はポタポタ水滴が垂れる顔でこちらを振り向いた。


「‥・ん。
実羽、拭いて。顔ー」


―‥・え?!

(ドクンッ)

心臓が一気に跳ねた。


「‥‥拭いて?」

もう一度、浬は声を少し強めて言った。


…ポンポン。

あたしは(仕方なく)浬の言う通り、浬のタオルで顔を拭いてあげた。

(トクントクン‥・)


それにしても、心臓が、うるさいのは気のせいだよね。






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