どっちつかずのキミ。









クラスメートの子達に先を越されてしまったあたしは仕方がなく席に座った。

だけど、どうしても聞き耳を立てずにはいられなかった。(ダメだとは分かってるんだけど…)


「浬くん、今日暇?」
「何で?」
「一緒帰ろ〜?どっか寄ってかなぁーい?」

猫撫で声で甘えた感じに言うそれが耳につく。

…あたしはあんな風に誘えない。(甘えた感じがどうも…)

羨ましい反面、憎らしい。

色目使ってんじゃないわよ。浬はそんなのに引っ掛からないんだから…。

あたしはすごく汚いキモチになる。

だけど、それも次の浬の言葉で愕然とする。


「ん、ぁあ…いいよ。」

…何で?何で断らないの?

「―暇だし」

あ…そっか…浬は、女のこなら誰でもいいんだよね。

別にあたしじゃなくても―…
浬はどうってことないんだ。



――いや…いやだ…嫌だ…あたしは―…嫌だ。

浬を、一人占めしたい。

誰かと一緒にいる浬を見たくない。考えたくない。


何であたしを誘わないの?

あたしを前みたいに、「一緒に帰ろう」って誘って欲しかった。








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