どっちつかずのキミ。








あたしは急に浬と二人きりになって気まずくなる。

浬に手を掴まれたままだから、動きたくても動けない。

ど…どうしよう。も…もう―…


「―て…手ぇ、離して。」

あたしは精一杯のか細い声で呟いた。


「…また、逃げんのかよ?」

浬は離すどころかギュッと強く握って離そうとしない。


逃げる―か…うん、そうしたい。(そこは正直だな自分よ…)

だって、やっぱりまだ怖い。まだ覚悟が…出来てない。

だから浬には悪いとは思うけどあたしは逃げたかった。



「なぁ…

俺こんな待ちぼうけさせられたの初めてなんだけど」


はい…?

またそれですか―?


あたしは一旦思考が停止する。呆れてもう言葉も出なかった。


「なぁ…

もう逃げんな?」


逃げんな…。

そう言われて、あたしは浬の方を振り返った。


浬はすごく切なそうな目で、今まで見たことない表情をしてあたしを見ていた。



そっか・・・あたしが浬に近づきたくない態度取って―…。

いつもあたしは肝心な所で逃げていっちゃって、浬を突き放していたことに気付いた。

あたしにその気はなくても、浬は避けられて嫌がられていると思ったんだ。



「もう逃げないよ…。」


そう言ったら、あたしは浬にキュッと抱きしめられた。








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