臆病なサイモン
情けない悲鳴が聞こえたかと思ったら、ホンダが踊り場にひっくり返っていた。
尻餅着いて、あわあわとビビってる様子なんか、チョー傑作なんだけど。
(ダンゴ…)
普段なら爆笑してやるってのに、今日はなんかそんなテンションじゃない。
理由なんてない。
いや、あるけど。
「…こいつ、ぼっ、僕を殴った!」
ホンダが、某パーマネントボーイの名言をなぞるように喚く。
はっきりとは見えないが、ホンダが尻餅着いたことでやっとダンゴの姿が確認出来た。
少しだけ角度を変えれば、ホンダファミリーの隙間からその表情も解る。
「…、」
解ったんだけど。
―――それを見てしまった瞬間、俺はこの世から消えて失くなりたいと、心底から、懺悔。
ぎゅううと、心臓を握られたような痛みに思わず下唇を噛む。
ダンゴ、ダンゴ、ダンゴ。
大丈夫かよ、とも言えない。
駆け寄ることも出来ない。
だってアイツ、泣いてないから。