臆病なサイモン








「消えろ、カス」


こういうセリフって、少年マンガとかによく出てくる、ガタイいい、ハスキーボイスの男専用かと思ってた。


でも、この時のダンゴ。

女でもこどもでもない中途半端な生き物の、絶妙なハイトーンがサイコーにイカしてた。

危うく惚れそうに…なんてな、寝惚けんなバカってやつ…じゃねぇ。

そんなことより早く逃げなきゃ不味い。

だってこんな盗み聞きしてる現場バレたら、「消えろ、どキンパツ」てオチじゃん。

俺、あのダンゴにあんな顔されてあんな啖呵キられた泣く。

クライングベイビー。

いやベイビーじゃねーけど。

リアルクライングサイモン。




「…うちに帰ったら覚えてろよ!」

…あーあ、バカなことばっか考えてた間に、ホンダファミリーからありきたりすぎて全然キまんない捨て台詞デタ。

逃げるようにスネ夫ズが降りて、くる…。


やば、見つかる。

しゃがんでっから、多分、すぐに目が合う。


(…ダンゴ、マジでごめん。なさい)


ペタペタ。

俺とは違う、正反対の律義な足音が響いてきた。







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