臆病なサイモン
―――いつものようにゆったり流れる夏雲。
太陽に熱されていた空気が、夜に近付きじわじわと冷えてゆく感覚。
アスファルトから上昇する硬質の据えた臭い。
それらはいつもとなんら変わりないのに、ただひとつ、いつもと違うものがある。
それはアレだ、つまり。
「…ごめん」
俺と、ダンゴ。
いつものように隣合わせに座って、俺はだらしない体育座り、ダンゴは膝を伸ばして状態、で、変わらないスタンス。
でも今日は、お互いの距離が見えてる以上に遠い。
―――とおい。
ドクドクドク。
心臓が内側から突き破られる。
さっきから続く沈黙と罪悪感が、俺から体力を奪っていく。
「……、」
ダンゴはずっと、無言だ。
俺も俺で無言のまま時間が過ぎていくなら、それはそれでもう、アリなのかもしれない。
…だって、なに言っていいかなんてわかんねーよ。
「ごめん」て言ってみたところで、なにに対して「ごめん」なのか俺にも解らないし。
盗み聞きしたこと?
秘密を知ったこと?
…多分、どれも的外れ。