臆病なサイモン








「サイモンは」

深い青空が屋上の金網を通り抜けて広がっている。



「…なにも訊かないんだね」

パピコの話題から唐突に切り替わったそれに、俺は危うくアスファルトに頭突きかましそうになった。



なにもきかないんだね。


…そんなの。





「訊かない」


訊けるわけねーじゃん。


自分から話してくれたの、聞かせて貰ったわけでもないのに。

壁に隠れて盗み聞きしたダンゴが「秘密にしておきたいこと」を、わざわざ掘り返したりしない。


「話してくれたら、聞くけど」

こっちからチョーダイ、なんて無責任な真似しない。

聞いたところでなにも出来ないし。

第一、それが許されるのって、「ダチンコ」の間柄だけだろ。



「…ありがと、」

だって、そこまで知っちゃってる俺に未だ自分から話せないってことは、なにかあるからだろ?

スネ夫の話がマジで、「そう」だったとしたら。


(まだ、そこから抜け出せていない…)

て、ことだろ?

俺には大事な人を亡くした経験はないからわからないけど。

きっとそれはとてつもなく悲しくて辛くて痛くて、虚しいことだ。







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