臆病なサイモン
その人が占めていたすべてが更新されることなく色褪せていく。
いつからかそこに潤いはなくなって、皹割れた皮膚みたいに傷が走り出す。
深く抉られた「傷」からは、きっと止まることがない悲しみが流れ続けるんだ。
それを止めることが出来るのは、「時間」なのかはたまた失った人とは別の「大事な人」、なのか。
―――でも。
「両親」を亡くしたダンゴは?
傷を埋め合えるだろう可能性大の「大事な人」をふたりいっぺんに亡くしちゃったダンゴは?
無表情のままだろうダンゴを一瞥することも出来ずに、臆病な俺はそれを考えて泣きたくなった。
「俺からは、」
澄んだ青空はどこまでも高く続いていて、それはきれいで清々しくて、優しいのに。
それが今、ダンゴの細い瞳を傷付け、突き刺すように映っているのかと思うと。
「訊かない」
心臓、いてぇ。