臆病なサイモン
「だからって高校行かなかったら将来こまるしな」
なんてダチのひとりが知ったように言う。
どう困るか、なんて誰も解ってない。
ただやっぱ、ある種の「知識的常識」として、「将来困る」って知ってるだけ。
―――みんな解ってるんだ。
小中過ぎて、高校まで行っとけば、まあそれなりに安心する。
この不況、大学卒でも職がない、なんて言われてるけど、そんなの俺らにはまだまだ関係ない。
高校行けば今よりおおっぴらに遊べるとか、ハイスクールライフ満喫しちゃおうぜ、とか、「高校生」てなんかかっこよくね?
…まあ、その程度。
「二学期始まったらまた三者面談だろ?ババアうぜーし」
親に言われて塾に通ってるやつが薄ぺらい進路表をぴらぴらと揺らした。
開け放たれた窓から、生温い風が吹いて俺のキンパツを撫でていく。
揺れたキンパツの先、それを辿るように空を見上げれば、眩しい入道雲が今日もでかでかとそこに居た。
サイコーの夏なのに。
「…受験かあ」
まだ実感なんて微塵も湧かないのに、不安だけなら腐るほど感じてる。