臆病なサイモン
「脱皮するとか言う前に、君、まだ蛹にもなってないじゃん」
分厚い舌でぺろりとクリームを舐め、ダンゴは俺に向かってそう言い放った。
「あ、そう…」
なんだー。
サナギにもなってない、と。
あ、そうね、サナギにもなってないのね。
了解しました。
ショックの余り二回言っちゃったよ。
「じゃあ俺ら、まだヨウチューってワケか」
なんか悔しいから、嫌味たっぷりの声出して、お前も道連れだ、と言わんばかりにダンゴを見てやった。
ら。
無表情の顔がにやりとひきつって、俺を見た。
唇をゆっくりと動かす仕種に、自然と目が行く。
集中力が極限まで達した瞬間、かん高い声が耳をグサリ。
「…じゃあ、「人間」に踏み潰されないように、気を付けなきゃね」
お互いに。
と、小さく付け加えられたそのセリフに、ビビりの俺が蒼白にならなかったわけがない。
「…イエァ、ブラザー」
チープな言葉だけど、それは臆病な俺に色んな意味を汲み取らせるには充分な威力。