臆病なサイモン
腹の底から悲鳴を上げながら、僕は決死の思いで屋上への階段を駆け上がった。
握っていた友達の手を、無我夢中で引っ張って。
「きああああああっなにぃいいいい!?」
「なにがいたのなにがいたのなにがいたの!?」
僕の悲鳴に触発されて、ちからいっぱい叫ぶ友達も、最大の恐怖に駆られて僕より早く階段を駆け上がる。
ちょっと待てよ!
僕を置いていく気か!?
「H田ぁ!キミ、なに見たんだよぉー!」
そんなの僕が聞きたい。
白いのがヒラリッて。
ヒラリッて、トイレの暗闇の奥から、ヒラリッて。
ドク…ッン!
「いやだいやだいやだいやだっもうかえるー!!」
もう、涙なんて出ていない。
極度の緊張で、悲鳴を上げる喉がばくばくと動く心臓と連動して、ひきつる。
はぁっはぁっはぁっ。