臆病なサイモン
完全に力を失った腰が抜けそうになって、友達と繋いでいた手が辛うじて僕を支えていた。
視線の先、思いきり開けたドアの影から、地面を這いずって現れた、「白い塊」、が。
―――ズルリ。
まるで、巨大なナメクジみたいに。
「…ッ、ひっ!」
慌てて逃げようとしたが、震える足首を「それ」にがしっと掴まれた。
生温いむにむにした指の感触が、スラックス越しの、足の皮膚を伝って直に脳を刺激する。
―――ひぃいいい…!
「頭部」が妙にタテに長くて、変な生き物だ。
両脇の友達が、僕の手を力一杯、握る。
…こわくて、うごけなかった。
「…うわ、」
声が、震える。
「ぅわ、ぅわ、」
涙が、じわりと、垂れて。
―――その「白い塊」は、ゆっくりと、ゆっくりと、そうまるで、「ナメクジの中から、なにか別の生き物が現れる」ように、僕を、見上げたのだ。
白の境から覗く、暗くて悲しくて、絶望する、眼球。
「ナメクジ」が、ぶるりと、震えた。
『た す け て …』