臆病なサイモン
「ごめ、」
とにかく一応謝っとこう、と口を開いたときだった。
「…うん、星、きれい」
掠れた声が、鼓膜をぴりりと震わせた。
シーツにくるまったまま、体育座りをするダンゴはいつもよりずっとリラックスして見える。
「星、綺麗だね」
ダンゴが洩らしたその言葉は、俺が予測してたものとは全く別のものだった。
ほし、きれい。
って。
(…あ)
今、俺とダンゴ。
おんなじものを見て、おんなじことを、感じてる。
(……なんか)
じん、て、キタ。
(感動、ってやつ?)
それって、今までいい加減なテンションに任せてダチンコと付き合ってた俺にとって、初めての「共有」だったのかもしれない。
それが純粋に嬉しかったのか、自分の言葉を拒否されなかったことに、ほっとしたのか、どっらかわかんねーけど。
校舎内では相変わらず、ぎゃあぎゃあ悲鳴ばっかり響いてる。
でも俺には、そんなの聞こえてこなかった。
―――だって。
「…ずっと前、バカにしちゃって、ごめん」
ダンゴが、空気に消えそうな声で、そう言ったから。