臆病なサイモン








「…お金なきゃ、なんもできないしね」

カラーリング代がなければ、このパツキンを黒に染めることもできない。

そんな世の中にしたのは「大人」達であって、俺達は作られた流れに適応しながら成長していってるだけ。


「大人」が「大人」だから、「子供」は「子供」なんだってことに、「大人」は気付いてない。



…て、あれー?

ハナシそれたー。


ダンゴの話を聞くつもりが、なんちゃってライブ屋みたいになってしまった。

こっから修正すんのは相当難しい。

どうする、サイモン。

どうする!?






「…サイモンは、なにを願うの」

悩んでいた俺の思考を遮って、ダンゴの固い声がした。

さっきまで笑ってたダンゴが、不意に真面目な顔で、俺を見ている。

ぶわりと鳥肌が立つくらい空気が変わって、俺は情けなくも竦みかけた。

こんな強烈に真正面から捕まれたのは初めてで、あぁ、なんか、知らない人間を相手にしている、ような。

キラキラと細い眼球に、俺の金色が反射した瞬間、猛烈に、怖くなった。



―――試されてる。








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