臆病なサイモン
夢を見た。
俺のパツキン頭を、父親と母親、妹の三人が、白髪染めで真っ黒に染めてる夢。
何故か俺、素っ裸で屋上に座らされて、なんかの儀式のイケニエみたいな感じで三人に囲まれてんの。
たらたら落ちる黒い染髪料が、じわじわと俺のパツキンを消していく。
まるで俺自身を、ころされてるみたいな気分だった。
で、目覚め最悪。
枕元のケータイ見たらもっと最悪。
六時てなにが?夕方?
あまりにも見慣れない時間帯に動揺した。
なにこれ現実?まだ夢の中?
て、ちょっと現実逃避。
でもだからって二度寝できる気分でもなかったし、仕方ないから食卓にあった菓子パンひっつかんで登校した。
六時過ぎとはいえ、夏の朝陽はとうに登っていて、すんと鼻を鳴らしたくなるような匂いを嗅ぐ。
したら、少し落ち着いた。
金八センセーに出てくるような青春チックな土手。
早朝の澄んだ空気の中を歩いてると、屋上に居る時とはまた違った爽快感。
キモチーな。
と思ってセカオワなんか鼻歌ってたら、土手の雑草の中に人影、発見。
朝露で濡れてるだろう雑草の上に体育座りしてやがんの。
だれ?まさかダチンコかなー?
なんて見てみたら、小さな頭が見えた。
で、てっぺんに「昨日と変わらない」お団子頭。
(うわ、)
誰かって?
判るだろ、ブラザー。
転入生「段 このえ」。
屋上で見た、俺のユーレイ。
デジャヴ。
昨日の一件を思い出して、俺はまたも逃げた。
やべえじゃん、チキンじゃん俺。
ブラザーに合わせる顔がねえ。
でもそれと同じように、「段 このえ」に合わせる顔も、なかったんだ。