臆病なサイモン








「…なにを、願うの」

もう一度、急かすでもなく、確認するでもなく、ダンゴは静かに、そう繰り返した。

切れ長の眼は瞬きもしない。

人形と対峙してる気分になって、遠くで悲鳴を上げているやつらが羨ましくて堪らなくなった。

少なくとも、ただ叫んでるやつらは、こんな重苦しいプレッシャーを感じていないから。

それとも、俺が弱虫だから、臆病だから、だから、飲み込まれそうになってんのかな。

―――わからねえけど、わかってることも、ある。




「俺の、ねがいごと……」

なんて安直な響き。

俺がここで殻に閉じ籠って、誤魔化すようにちゃらけて答えたら、ダンゴはもう二度と、俺に心を開いてくれなくなると、思った。

俺のドロドロした、今まで蓄積されてきた醜いないものねだりを、欲を、感情を、隠さず、曝さなきゃ。


ダンゴは、きっと。



『君は、他人を羨み過ぎてる、ただのコンプレックスの塊だ』


「俺」は、そこで終わっちまう。










< 150 / 273 >

この作品をシェア

pagetop