臆病なサイモン
交通事故だったの。
(吐息を吐くような儚さで、ダンゴはそう口にした)
…たまたま、私を学校まで迎えに来てくれようとしたふたりを乗せた車が、信号無視の車に跳ねられて。
『段さん…!』
なにも知らず、学校で両親を待っていた私は、報せを聞かされてすぐ、病院に向かった。
「でも、遅くて」
病院に着いた時にはもう、ふたりの顔には白い布が掛けられていた。
お線香の匂いが鼻に纏わりついて、目の前が真っ暗になる。
私は怖くて、ふたりの死に顔を、直視できなかった。
(…俺は、泣きもせず、そんな言葉を紡ぐ貴方を、直視できそうにない)
お別れが出来なかったことを、未だに後悔してる。
どうしてちゃんと、さよならをしてあげられなかったのだろう。
どうして、手を握ってあげられなかったんだろう。
「現実味がなくて、でも、とても、こわい……」
それは確かに、「死」の気配だったのかもしれない。
「お葬式が終わって、ようやく実感が湧いてきたけど」
優しかった家でひとり、膝を抱えながら。