臆病なサイモン
鏡をじっと見ていたら、そこに映る俺とダンゴが今にもすり変わっちまうような感覚に陥った。
キンパツと黒髪が混じって、波紋を描いて吸い込まれていく―――ような、感覚。
その耳鳴りに混じって、じわりと蘇る、夏闇に融けそうな、声。
『また、会いたいな…』
怒涛の衝撃と幸福に見舞われた終業式当日の「サマバケ」。
あの夜のダンゴの、心底からの「想い」を、俺は受け止められたのだろうか。
ダンゴは俺のように涙を流さなかったし、テンションすら下げなかった。
『そろそろ、オバケに戻ろうか?』
…なんて。
相変わらずいつもの涼しげなカオして、しれーと化かし役に戻ったりして。
なんも、変わらない。
だからこそ俺はダンゴの頭を撫でることもしなかったし、手を握ってやることもしなかった。
(いや別に、握りたかったとか、そんなんじゃなくて……)
イマイチ「臆病サイモン」から抜けられない俺と、イマイチ「見せて」くれない、ダンゴ。
(…わかんねぇーッス、先輩)
は、と気付いたら、ダンゴの影は消えてた。
俺、ドタマイカレポンチサイモンに名前変えようかな。