臆病なサイモン
「…っずみばぜ、」
考え過ぎて、「木」の一本に体当たりしてしまった。
慌てて泳ぎをやめ、ゴーグルを外し水面から飛び出したら、飛沫がキラキラ飛んで目の前に立っていた「木」に思いきり跳ねる。
「…あ!?」
びっくりモンキー。
そこに居たのは、プールがこれでもかって言うくらい似合わないガリガリの体に、水でぺったりと頭部に張り付いた薄い髪の毛をしたタメくらいの男子だった。
タメくらい、ていうか…タメだけど。
「…この前の、不良」
あっちも、俺が誰か解ったらしい。
なんでこんな所に、とでも言いたげに眉を寄せて睨み付けてきた。
さすがにメガネは掛けてない。
―――俺がたった今ぶつかった「木」は、ダンゴのイトコであり、「スネ夫ファミリー」の一員であり、性悪である、あの、「ホンダ」くんだったのだ。
「…なんで、オマエが居るんだ」
…なんだその言い方。
俺よりオマエのほうがよっぽどプール似合わないけどな、とは言わない。
てか受験勉強はどうした。