臆病なサイモン
「…なんで、オマエがこのえの名前を」
(…へー)
ダンゴのこと、このえ、って呼んでるんだ。
…そりゃそうか。
いちお、同い年のイトコだもんな。
「俺、段とはクラス一緒だからさ」
それが面白くなくて、無意識に声が低くなってしまった。
だって、ダンゴと最もたくさん話してんのって、今んとこ俺だけなのに。
俺はダンゴに「見せて」もらいたくて必死なのに。
こいつは性格悪いくせに、ダンゴを傷付けるくせに、「イトコ」ってだけで全部知ってるんだ。
―――ムカつくだろ?
「このえなら、墓参りで実家に帰ってる」
ホンダは唇を尖らせながら視線をさ迷わせ、ぶすこらそう答えてくれた。
どうやら一緒に泳ぎにきてる例の「スネ夫ブラザーズ」を探してるらしい。
知らねーけど。
(ダンゴ、地元に帰ったんだ…)
じゃあ夏休みは遊べないな、なんて、ふざけたこと考えた。
ケー番もメアドも知らないくせに、どうやって遊ぶつもりだったんだよ、ばか。