臆病なサイモン
「……クラス全員から無視されてさ。持ち物とかも盗られたりして…。でも結局、親にバレて、親が学校に抗議しに行ったらしいけど?」
そこで何故か、「ホンダ」がかつてない笑みを浮かべやがった。
それがサイアクに気色悪くて、もうほんと、リアルにサブイボ。
ぱしゃん。
脇で遊んでいたこどもから跳ねた水が、俺の頬を叩く。
周りではわぁわぁぎゃあぎゃあ大勢が騒いでいるのに、おもむろにキィンと耳鳴りして、一瞬だけ、音が聞こえなくなった。
それに合わせるように、「ホンダ」がゆっくりと口を開く。
「―――でも、その翌日に親がふたりとも死んじゃってさ。
ほんとついてないよね、このえチャンは。
自分が苛められてたせいで親が事故るなんて、カワイソーなやつ」
ははっ。
ここで俺は、「不幸」を鼻で嘲笑ったホンダのクソヤロウを、今すぐプールに沈めてやりたくなった。
…てか、白状する。
「ぎゃあああ」
ぶっちゃけマジで沈めた。
トラウマになっちまえ、とか本気で呪った。