臆病なサイモン
「まあ、別に観なくていいけど」
観ない、とは言っても、自分んちでDVD鑑賞してるのとはわけがちがう。
でかいスクリーンに高音質な音響機器。
「専用」のハコ内で目だけ逸らしたって、耳に入るおどろおどろしい音からは逃げられない。
「音」や「台詞」だけ聞けば、リアル以上に想像が広がって尚更コワい。
だからって直視はいやだ。
印象に残りすぎる。
…だからってやっぱ直視なんかできない。
救いようのない悪循環。
「サイモンは想像力が豊かだしね」
ぷっ。
…しかも完全に見抜かれている。
あのダンゴが笑いやがった。
あ、これもうぜってー逃げられないわ。
『―――ほんとついてないよね、このえチャンは』
(……あ、)
だめじゃん。
だめじゃん、俺。
ここで逃げるって?
『…聞くかい?』
ダンゴの知らないところで、ダンゴの触れられたくない「キズ」を、身勝手な理由で第三者から聞き出して。
最低、じゃん、俺。
そこの「責任」は、きっちりつけなきゃいけない。
だって、俺。
「…観る」
ダンゴと、「ダチンコ」になりたい。