臆病なサイモン
ふ、とダンゴが隣で笑ったのを、俺は知らんぷりした。
(ちーくーしょー)
ぜんぶ見透かされてるって、不利すぎる。
だから悔しさ噛み締めたところで、なにがどうなるわけでもないし。
「……ホンダから、聞いた?」
そろり、と機嫌を窺うようにダンゴを見た。
ダンゴは思い出したようにミルクティから口を離し、上げていた口角をごく自然に下げる――ほぅら不機嫌なお顔の出来上がり…って、こわっ。
「…帰ってきたら、まっさきに話しかけてきたよ」
普段なら、私が居ると解ったら部屋から出てこないくせに。
何事かと思ったら。
「『オマエのクラスの不良に全部バラしてやったぞ!イジメのこともおじさん達が死んだ理由も全部だ!ざまあみろ!』」
ダンゴがホンダの声真似でそう叫んだ。
「…だってさ」
同じく映画内でも大音量が響いたあたりだったから、他の観客達は気付いてない。
ダンゴのいきなりの大声におったまげた俺は、恐る恐る続きを促した。
「…そ、それで、ダンゴはど、どうしたの?」
―――尋ねた瞬間、ちょっとだけ後悔する。