臆病なサイモン
ダンゴの細い眼がゆらりと深まって、ホンダ以上に性悪な笑みが浮かぶ。
「『…黙れ、このドウテイが』」
地を底を這うような声色が、しんと静まるホラー映画と相まって、…なんだかもう、オイラ泣きたい。
「って、怒鳴りながら、役に立たない股間を蹴ってやった」
にやぁと上がった口角は、俺にホンダへの同情心を抱かせるには充分だった。
ダンゴは自分にアッパレ!とでも言うように気分を良くして、そっからはもう、花が舞っているかの如くご機嫌。
「君の話も聞いたよ」
「学校」という枠から飛び出しているせいか、今日のダンゴは饒舌だった。
それとも地元に戻ったことで、本来のダンゴが顔を出しているんだろうか。
「プールに沈めたんだって?」
輝きがいつもと違う、細い両目。
それはなんだか恥ずかしい話題ではあったけれど、誇らしくもあった。
褒めてもらってんのかな?て、ホラー映画そっちのけでダンゴを見たら。
「ダチンコとプール行けて良かったね」
大人びた表情が急に向けられて、怯む。
しかもその台詞。
…あ、そっち?
みたいな。
(おひとよし…)