臆病なサイモン
自分の憂さ晴らしより、俺の進歩を素直に褒めてくれたのには、本気で呆れた。
でも、本気で感謝してる。
本気で、嬉しい。
「これから、ちょっとずつ、変わっていくよ」
そう言って、ダンゴは笑う。
最上級の励ましは、「ケイコ」の悲鳴と重なりながらも、俺の耳にじんと馴染んでいった。
自分の領域を、ホンダなんかを経由して踏みにじった俺に、素直に良かったね、なんて声を掛けてくれるなんて。
最低だよな、俺。
謝らなきゃ、進めねーよな。
「…ごめん、」
勝手に聞いて、ごめん。
触れられたくない「傷」に、身勝手に手を伸ばしたりして。
「…あの馬鹿をなぶる理由を作ってくれたから、ヨシとする」
マジな顔で、マジに謝る俺の頭を、ダンゴはぐしゃりと撫でた。
それがとんでもなくナチュラルな仕草過ぎて、素直に受け入れてしまう。
まるでコイビト同士みたいじゃーん。
て、さ。
でも、おふざけは、ここまで。
「……」
緩く俺のキンパツを撫でるダンゴから、音もなく笑みが消えたから。
まるで、「なにか」を思い出したみたいに。