臆病なサイモン
「まぁ、「イジメ」って言うほど大層なもんでもなかったから、あんまり気にならなかったし」
いやそれ、イジメだ。
…とは、さすがにこのシーンじゃ言えない。
(俺だったら、傷付いて傷付いて傷付いて、最終的にはやさぐれて、ジサツしちゃうかも……)
それは一見、感情がないとか、諦めちゃってるとか、べらぼうに強い、とか。
そんな話じゃ、なくて。
ほんと、ドライなオコサマって感じの口調で、ダンゴらしいな、って思うような。
ダンゴは、無表情だった。
「辛くなかった、なんて言ったらウソになっちゃうけど」
映画館の肘掛けに頬杖ついて、表情の見えなかった目許が緩まる。
「でも家に帰れば、父さんも母さんも居たから」
それは、俺には絶対言えないような、言葉だった。
それをサラリと言ってのけるダンゴは、俺とは全くの対局に居るんだってことに気付く。
出会った当初は、まるで自分のユーレイを見ているような気分だったのに。
(似てやしねぇじゃんかよ…)
だってダンゴは、やっぱ「ツワモン」だ。