臆病なサイモン










『このえが笑ってるから、お母さん達、気付けんかった』

無理して笑ってたわけじゃないよ。

私はいつだって、楽しいから嬉しいから、笑ってたんだよ。



「抱き締められて、泣かれて、謝られて、びっくりした」

そこで初めて、ダンゴは笑った。

まるで大した話じゃないよ、なんて、俺なんかに断ってるみたいに。



「……びっくりしちゃって、言えなかったの」

震える母、涙を堪える父。

こんな優しいふたりから産まれてこれたことが、とても嬉しかったのに。



―――泣かないで。



どうして、言えなかったんだろう。



『……私、幸せだよ』


頭の中で何度もループしてた大切な言葉を、どうしてあの時、私は言えなかったのだろうか。


『お母さんとお父さん、明日、このえを学校に迎えに行くから。だから、だから、一緒に頑張ろうね』


そう言って、涙ながらに笑ってくれたことが、嬉しかったから。

だから。



「…ちょっとの間くらい、「イジメられっ子」で居てもいいかな、って」


軽い気持ちで、そんなことを。


「大切な人」が自分の為に流す「涙」が、優しくて暖かくて、嬉しかったから。








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