臆病なサイモン
「…あついね」
隣に座るバカひとり、ダンゴが呟く。
あちいね、なんてそれに返しながら。
(……あ)
いつもの後れ毛を伝って、汗の玉がツ、と首を流れるのが見えた。
草むらに座り込むダンゴは小さく体育座りしてて、映画館で見せた「涙」の名残りなんかもう、微塵も見せやしない。
肩の力は抜けてるし、チャリンコに乗ってる間に乱れた髪はさやさや風に乗ってるし、なんか、ほんとナチュラル。
学校の屋上じゃ、毎日こんなんなのに。
(…なんか、知らないオンナノコと一緒居る気分だ)
とくとく。
リズム叩く心臓は、汗で束になったキンパツなんか気にしない。
風が、優しい。
見上げた先には、でかい入道雲と、目を刺すようなサマーブルースカイ。
「きゃははっ」
架線の向こう側では、小学生くらいの子供ふたりと父親らしき男性が、河で水遊びしてる。
パシャパシャ、水面を叩く音が心地いい。
「ぱぱー」
こどもの無邪気なそれは、とても羨ましかったけれど。
すごくイイ、「時間」だ。