臆病なサイモン
「…あのさ、」
こんないい、時間なのに。
どうしても。
「聞いてほしい話が、ある」
そんで判決を下して欲しい。
背中を思いきり叩いて、前に押し出してくれ。
頼む、マイシスター。
「…うん」
俺の決意を無駄にはしないその返答は、屋上でのダンゴと同じ声の固さだった。
(…やっぱ、いつものダンゴが、ダンゴらしい気がする)
それは俺が居たたまれないってのも、理由のひとつだけど。
こんな風に、誰かの一面一面を垣間見る経験なんて今までしてこなかったから、自分が今とんでもなく緊張してるのが解る。
今まで、新しい一面を見る前にサヨナラしてばかりだったから。
それを見てしまったら、親密になりすぎてしまう気がして。
でも、ならどうして、俺はダンゴを許してしまったんだろう。
ダンゴが勝手にサイモンエリアに入り込んできたわけじゃない。
俺が招き入れる形で、ダンゴは日常の住人になった。
―――それはきっと。
(…俺とダンゴは、正反対、だからだ)