臆病なサイモン








だってダンゴは、面と向かって話してくれたから。


俺みたいなやつとフェアで居ようとして、マジな顔して、話してくれたから。


「ホンダ」から勝手に間聞きしたことに罪悪感を感じてる俺を、許すために。

そんなことのために「傷口」を話してくれたダンゴとは、絶対にフラットで居たい。



―――だから、聞いて、ダンゴ。





「俺は、それを言われた時、めちゃくちゃ嬉しくて、それからはずっと、それを大事に大事に、抱えてたのに」


どうして思い出せないのだろう。

思い出せたら、きっと「呼べる」気がするのに。

まるで喉に引っかかった魚の骨みたいに、ズキズキ痛くて邪魔になる。







「…それは、誰に言われた言葉なの?」

ビー玉が、無表情な瞼から俺を見ていた。

昔よく舐めた黒糖アメみたいで、甘そう。


…あ、視界が、暑さでグルグルしてる。


誰に言われたか?


そりゃもち。





「おとう、………父親に」


ぽろり。


もあるよ、じゃねーよ。






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