臆病なサイモン
「力になればいいの?後押しすればいいの?ガンバレ、って言葉を掛ければいいの?」
ズキーン。
真摯な無表情が、ド!右ストレートで俺をぶん殴る。
それは俺が無意識に吸おうとしていた甘い蜜を敏感に嗅ぎ付けた、ダンゴの勝利。
だけど、そんなつもりじゃ―――。
「…君はいつも、逃げてばかりだ」
思わず反論しようとした俺を、ダンゴは静かに制して見せた。
それは臆病な俺のイタイ部分をチクリと刺して、的確に責める攻撃。
さっきまで感じていた穏やかな空気なんてもう、微塵も感じられない。
―――ダンゴのマジ目は、マジ目の俺を、本気で叱ってた。
「…自前の「キンパツ」なんかを理由にして、今まで何人を傷付けてきたの?」
「事実」、を突きつけられると、なんかもう、気が遠くなりそうだった。
さやさや吹く風で舞い上がるキンパツに、おとなしくしてろよ、なんて念じながら。
「自分も傷付いてきたから、おあいこだから、今までのことはチャラになる?」
―――なるわけないよね。
小さな囁き声は、ラスボスが吐き出す毒。