臆病なサイモン
(―――あ……、)
ぱちくり、なんて効果音が、マジでお似合いだったかもしんない。
大声でさんざ喚いたせいで、息が上がってる。
ドク、ドク、ドクッ。
それとは別の理由で、心臓は早鐘を打つ。
(―――俺、いま…)
『オヤジ』。
そんなの、今まで、言ったことも考えたこともなかったくせに。
人生で初めて、マジになった口から出た言葉がそれだなんて、なんか、恥ずかしい。
―――けど、めちゃくちゃ、うれし……。
「いたい」
けれど、喜びも束の間。
そんな俺の目の前には、頬を赤くした魔王が居た。
「あ、」
―――ぱちくり再び。
…殺されるかも、しれない。
「ごっ…ご、め」
慌ててしゃがみこんで、ダンゴに頭を下げる。
オンナノコ殴るなんてサイテー!
ホンダよりサイテー!
なにやってんだ俺!
なにやってんだ!
「…ほんとごめん!」
無我夢中で、とにかく力一杯殴っちゃったから当たり前なんだけど、ダンゴの頬はマジで赤くなっていた。