臆病なサイモン
「ずっと殻に閉じこもって、そのままダンゴムシになっちゃえばいいよ」
―――ダンゴムシ?
「…それは、やだ」
ダンゴの口から飛び出た不可解な単語に、俺は咄嗟に反論してた。
ガチで、ダンゴムシは、いやだ、なんて。
じゃあ俺はダンゴムシのヨウチューだったということか。
てかダンゴムシのヨウチューてなに?
ヨウチュー段階が果たしてダンゴムシにあんのか?
…アホらし。
でも、ダンゴの求めてる言葉は、こんなんじゃない。
「俺は、ダンゴムシには、ならない」
もう一度、意思を伝えるように。
俺は、「あの人」に、ただ一言を、伝えたいんだ。
さっか叫んだ悲鳴染みたそれが、まんまアンサーだけど。
「…うん」
それを聞いたダンゴが、ちょっとだけ微笑んだ気がする。
さわ、と地面を這うような風が膨らんで、ダンゴと俺の横面を撫でていった。
「おめでとう、」
それは、「始まりの風」だ。
「君は、ヨウチューから、ニンゲンに進化しました」
ちくしょう、世界がこんなにも、優しいなんて。