臆病なサイモン










―――いや、ま、しやわせな回想は置いといて、今日はいつもの夏休みとは、ちがう。





「いってきやーッス」


長い夏休みの中でランダム二日しかない、貴重な日だ。

タンスの中に突っ込んどいた夏服を取り出して、薄手のスラックスでキメる。


学生鞄はダセェから持ってかない。

お洒落ショルダーを袈裟懸けして、チャリンコかっ飛ばして、いざ行かん!



ダッシュダッシュダッシュ!



―――だって、今日は。








ガララッ。




「サイモンくん、遅刻です」


なんちゃって出校日です。



「はよす、センセ!サマバケ、満喫してマスカ!」


テンション上げたまま、センセーはじめ、クラスのやつらに挨拶する。


―――なんでかな。

黒髪のやつらのなかに、キンパツが紛れ込んだにも関わらず、何故か俺は、孤独を感じなかった。



「ひさー!サイモン!」
「ちょぉ肌焼けたんじゃね?」


おうよ任せろよ。


市民プールの補助券使いきったくらい常連化してるから。



「サイモーン!」

…多分、こいつらが居るからなんだろうな、って、素直に思う。







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