臆病なサイモン
まさかサボりの線が濃くなるとは予想外だった。
だってあのホンダだぜ?
(…わかんね)
詰まっていた生徒達が、また徐々に動き出した。
「なあ、聞いてっかよ、サイモン!」
ダチンコにそう話し掛けられて、俺の脳内からホンダのことはスポンと抜けた。
ダンゴはちゃんとここに居るし、なら、心配は要らないよな、って。
「あ、ごめ、なに?」
慌ててダチンコの話に耳を傾ける。
ダンゴはスムーズに人の流れに乗って、随分と先まで進んでた。
「だからさ、」
俺と身長がそんな変わらないダチンコが、ちらりと進行方向の先を見た。
なに?
なにかを確認してから、声のトーンを落とす。
「…段のウワサ、やっぱマジだったぽいよ」
ウワサ?
段て誰だっけ…て、ダンゴの本名だった。
あぶね、あだ名に慣れすぎて本名ど忘れしてた。
「うわさ…」
でも、ウワサって?
あ、まさか。
『…段のヤツ、二組の男子と同棲してるんだってよ』
てやつ?
…オマエ、古い話題持ち出すね。