臆病なサイモン









「…あ、サイモン!」


廊下から俺らの教室を覗き込んでたダチンコが駆けてくる。

いつも陽気でヘラヘラしてる顔が、今日はなんだか青ざめて見えた。




―――いやな、よかんがむねをよぎる。



「どうしちゃったの?」

トクトクと心臓音が大きくなっていく。


いやな、予感が―――。




「オマエんとこの転入生、ヤバいって………」



ド ク ン!

俺はダチの話もろくに聞かないまま、右足を上げて駆け出す。


「サイモン!?」

俺の嫌な予感を的中させるダチンコの言葉は、「転入生」の響きだけが、心臓音と重なって妙に音量でかく聞こえた。

人を掻き分けて、ざわざわ耳に不愉快な人混みから抜ける。





『…また、会いたいな』


あの涙を、俺はきっと一生、忘れない。






(―――ダンゴ!?)


タン!と教室に着いた足音が、とてつもなく、軽薄に響いた気がする。

窓が開け放たれた教室では、金具が外れた薄汚れたカーテンがバサバサと揺れていた。

机の合間合間に、ぽつぽつと何人かの生徒が挟まっていて、全員が、黒板を見てた。


そして黒板側に、たったひとり。






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