臆病なサイモン
「や、…俺が悪かったかも。段さん、ごめん、ちょ」
俺が頭ごなしに怒鳴ったにも関わらず、ダチはダンゴに対して素直に謝ってくれた。
最後、ファニーだけど。
…でもダンゴは、黒板を見つめたまま、やっぱり反応しなかった。
ぼんやりと、文字や写真を見つめながら、なにを考えているんだろう。
小さな女の子が、オトウサンらしき男の人に抱っこされてる写真。
オカアサンぽい女の人の髪を結わう、ちょっと大きくなった女の子。
三人で写ってる、中学校の入学式の写真。
それらはダンゴにとって大切な思い出の形の筈で、こんなレアなものを持ち出せるのは、やっぱり―――。
「…読めばいいじゃないか」
聞き慣れた声がした。
それはその性格と同じように神経質ぽくカタくて、だけど、無神経な声。
ざわりとざわつく騒ぎの中で、そいつはやせっぽっちの体を棒切れのようにそこに立っていた。
―――「ホンダ」。
神経質な眼鏡をくぃ、と上げて、後ろにはスネ夫ファミリーを従えて。
その声に、ダンゴがぴくりと反応したのを、俺は見逃さなかった。