臆病なサイモン
「明日、ミカちゃと遊ぶから兄ちゃんのこと自慢しようっと!」
すき焼きをツマミながら、妹がふふふ、と笑った。
「やめなさい。小さい子が真似したら大変だからね」
そんな妹をたしなめたのは妹の隣に座る、父親。
じゃなくて、オ、…オヤ、…オヤジ、だった。
柔らかく発せられたその言葉はどこか否定的に聞こえた。
(―――もしかして…、)
この人は、俺がやったことをよく思っていないのかもしれない。
いつもよりずっと口数も少ないし、いつもは俺から逸らしてしまう視線も、今日はこの人が合わせようとしない。
―――ズキーン。
て、すき焼き肉をとき卵に浸けながら、泣きそうになった。
(…早速、挫けそうです。ダンゴ先輩)
『君なら、できるよ』
ウッス。
だからって、もう、逃げるのはヤメだ!って、決めましたから、俺。
サイモン、頑張ります!
みたらし先輩!
あ、まちがえた。
ダンゴ先輩!
(……よし、まだネタ言える余裕ある)
がんばれ、俺。