臆病なサイモン









(でもだからって、こう、あからさまだと……、あ、あれ?)


そこまで考えるに至って、俺は絶望した。


(今、オヤジがやってるこれ、俺が今までオヤジにやってきたことじゃん…)


屋上で初めてダンゴを見たとき、俺のユーレイが出てきたのかと思ってビビったけど、今はピカッピカに磨いた鏡を見ている気分だった。

今まで俺がオヤジにやってきた、間抜けで馬鹿でズッコイ真似を、オヤジが今、俺に実行してる。



(…無意識なんだろうけど、)


けど、でも、俺は萎んでしまった。





「ごち、です」


―――結局、久々に全員が揃った食卓だというにも関わらず、やっぱいつものように母親と妹のガールズトークだけで終わってしまった。

オヤジはそのまま洗面所に向かっちまったので、今日に限って、一言も会話してないことになる。



なにこれ、悲しい。


でも省みてみたら、これもあれもどれも、全部、今までの俺がやらかしてきたことに当てはまっていた。


キンパツを見せたくなくて、オヤジの前から素早く消えたり、会話しても、微妙な返ししか出来なかったり…当てはまりすぎてて、こわい。








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