臆病なサイモン








(もし無意識じゃなくて、故意だったら…)


そんなこと考えたくもなかったけど、俺は無意識に青ざめていた。





「兄ちゃん、花火しようよ」

そんな俺は、やけに機嫌がいい妹から線香花火の袋とマッチを渡される。



「いまからぁ?」


ほんとはもう、歯を磨いてふて寝したい気分だったんだけど、洗面所にはまだオヤジが居るらしい。


…てワケで、ノらない気分を無理にノせて、妹の誘い付き合うことにした。


蒸し暑い風が吹き抜ける縁側に出て、妹が持つ細いこよりの先に火を着けてやる。


じわじわと徐々に弾けてゆく滴に照らされて、妹は感嘆の声を漏らした。



「きれーい!お兄ちゃんの髪の色に似てるね!」


ちくしょう、カワイイこと言うじゃねーかよ。

でも、無邪気にそう言って笑うクロカミの妹が、俺はちょっとだけ羨ましかった。




『―――似てない、ね…』

どうしたって、壁があるのだ。

キンパツの俺と、クロカミのオヤジ。


噛み合うことのないジレンマのように、終わりが見えない。



セツネェ…。







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