臆病なサイモン










「…ヘタレた子だと思ってたけど、お友達のために拳を振り上げるなんて、あんたも男だったのねぇ」


本気で悩んでやがる俺に、あっけらかんとそうのたまったのは能天気な母親だった。

皿を片付けながら、なにそのほんと天然ネンな発言。


…なにもかもが余計なお世話すぎて、反論する気にもならない。

彼女の「浮わついた気」のせいで、俺はキンパツに引け目を感じながら今までを生きてきた。


けれどこの人は、そんなのこれっぽっちも気にしない。


「妹」と一緒になって、「お兄ちゃんのキンパツ、綺麗だねぇ」とか平然と言いやがるんだぜ。


最強すぎて、こわい。


自分の発言にも行動にも、責任を伴わないパーフェクトな自由人。



(…たまに思う)


ちょっとでもこの人のDNAが強く入ってたら、俺も楽天家になれたんだろうか。




「…………いや、無理」



自由人になるくらいなら、俺はヘタレボーヤのままでいい。








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