臆病なサイモン
(…うん。俺は、どっちかって言うと、父親寄り……)
―――あ。
ぱちん。
線香花火の繊細な火花が、記憶の種と一緒に弾けた。
ゆらゆらと揺れる塩素くさい水面。
眩しい太陽に、どでかい入道雲。
プール好きの俺にさんざ振り回されて、カリカリに焼けた肌をした、大きなあの人。
『気にしなくていいんだぞ。父さんは、お前のキンパツが好きだ』
浮き輪を膨らませながら、あの人は。
『とは言っても、悩むだろうなぁ。…お前は、俺にソックリで、生真面目だから』
そして笑い皺を寄せて、笑う。
―――思い出した。
(…ばかだな、俺)
たかが「ソックリ」、って言われたくらいで、テンション上げてそれを大切にしてるなんて、どんだけピュアなんだよ。
(俺のキンパツが、好き…か)
今も変わらず、そう思っていてくれるだろうか。
俺は今まで、貴方にひどいことばかりしてきてしまったけれど。